フンセン首相は中国依存から舵を切るのか、米政権交代で外交修復の時

フンセン首相は中国依存から舵を切るのか、米政権交代で外交修復の時
2020年12月21日(月)16時53分 公開
フンセン首相は中国依存から舵を切るのか、米政権交代で外交修復の時

<写真:Asia Times>

 

新型コロナウイルスのワクチンをめぐっては、中国の李克強首相が今年8月に中国産ワクチンの準備ができたら東南アジア諸国に対する供給を優先するとしていた。

しかし、12月、フンセン首相は、世界的に流行する新型コロナウイルスのワクチンについて、国民の最大20%分のワクチンを確保するためワクチンの国際的枠組み「COVAX」から調達することを発表した。

カンボジアはWHOが認めたワクチンだけを購入し、中国の製薬会社である科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)のワクチンは当面、調達対象から外す方針だ。

 

その一方、カンボジアと同じく東南アジア諸国の1つであるインドネシアには12月6日、科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)が開発した新型コロナウイルスワクチン120万回分が到着していた。

この事態に対して、中国はなぜ、同国との関係が極めて緊密な国の1つであるカンボジアへ「ワクチン外交」をしなかったのかについて、疑問の声が上がった。

カンボジアでは最近、アメリカとの外交を犠牲にして中国へ近づく外交政策の再考の必要性について議論がなされていた。

 

1953年にカンボジアが独立してからわずか5年後の1958年、ノロドム・シアヌーク国王は、『Cambodia Neutral: the Dictate of Necessity』という外交に関する記事で中立外交について言及していた。

現在、与党・カンボジア人民党の批評家やアメリカの批評家は、カンボジアの外交政策が反アメリカで中国に大きく依存していると主張している。

シハヌーク国王の時代のように、カンボジアは現在アメリカが内政に干渉することについて激しく拒否しているという。

 

2017年、カンボジアはアメリカとの合同軍事演習を突如中止し、中国との合同軍事演習を開始した。

今年10月には、カンボジアのリアム海軍基地でアメリカ支援で建設した施設が破壊されていたことをめぐり、中国の軍事利用に便宜を図ることだとしてカンボジアはアメリカから批判を受けていた。

カンボジアの中国への依存度については、2018年の総選挙でフン・セン首相率いる与党のカンボジア人民党が全議席を独占し、事実上の一党独裁体制を確立した時から高まったとされる。

 

総選挙前年の2017年には当時の最大野党であったカンボジア救国党(CNRP)に対して最高裁判所が解散を命じ、2018年の総選挙は対抗勢力不在の状態で行われていた。

これに関してアメリカはカンボジアの政府高官に対するビザ発給の停止や政府間援助の減額などの制裁を課し、欧州連合は武器以外の全ての品目を無課税でEUに輸出できる「EBA協定」を一部停止する経済制裁を講じていた。

 

対照的に、現在では中国がカンボジアの最大の貿易相手国となっており、カンボジア商業省によると、2019年のカンボジアと中国の貿易額は93億6000万ドルに到達した。

さらに、今年の10月中旬にはカンボジアと中国は自由貿易協定にも署名した。

 

また、来年からカンボジアの経済を支える観光業を回復させる場合、ヨーロッパやアメリカよりも自由に旅行することができる中国人観光客に依存する可能性があるとされる。

しかし、貿易と投資における中国の優位性は、必ずしもカンボジアに有利に働くとは限らない。

 

中国企業は中国人労働者を雇用し、カンボジア国内の土地だけを利用していると国民から非難の声が上がっている。

さらに、中国人による投資が盛んなシアヌークビルでは、同市が中国の”植民地”になっているとの声も上がっている。
 

今年、中国との関係が密接になりすぎていることから、カンボジアとラオスを東南アジア諸国連合(ASEAN)から除名するべきだとシンガポール元外交官が主張を繰り広げた。

実際、中国からの支援はカンボジアの政府に流れる傾向にあり、欧州諸国からの支援は議会や政党・労働組合などの組織に属さない民衆にあてられるため、中国からの支援がより魅力的であり、現在のカンボジア人民党の体制を支えている。

 

一方で、カンボジアが中国との密接な経済的及び外交関係を維持すると同時に、アメリカを始めとする他国との関係も改善することができるという声もあり、現在の外交政策の問題を改善することができるとの声もある。

先日行われた4時間に及ぶテレビ演説で、フンセン首相は中国について言及しておらず、中国からより大きな譲歩を得るための策略なのでは無いかとの推測が広がっている。

しかし、アメリカ・中国・カンボジアの3ヵ国間の緊張が高まることは、カンボジアにとって好ましいことではなく、外交政策の改善がされないと2021年のカンボジア政府の状況はさらに悪いものとなるという認識が高まっている。
 

実際、今年11月にはアメリカの共和党議員らがポンペオ国務長官に、人権侵害の深刻化や民主主義の後退を理由にカンボジア政府・軍・治安関係者ら数十人に対して経済制裁を科すよう要請していた。

バイデン新政権のもと、カンボジアの民主主義の後退に対して制裁が科されるかは未知数なものの、アメリカの新大統領就任はカンボジア政府にとっては外交政策をより中立に近づけるための機会になるとみられている。

 

 

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