原発導入は現実か幻想か、カンボジアが直面するエネルギー危機

原発導入は現実か幻想か、カンボジアが直面するエネルギー危機
2026年05月26日(火)00時00分 公開
原発導入は現実か幻想か、カンボジアが直面するエネルギー危機

<写真:khmertimeskh.com>

 

カンボジアにおける原子力発電導入の是非が、エネルギー安全保障の観点から議論されている。


世界的な供給網の混乱や地政学的競争の激化により、エネルギー輸入国の脆弱性が顕在化する中、急速に発展するカンボジアでは電力需要が増大している。


2024年の発電設備容量は5044メガワットに達したが、石炭依存が依然として高く、石油やガスを含めたエネルギー消費の約67%を輸入に頼っている。


過去10年間でエネルギー消費は年率約20%で増加しており、長期的な戦略構築が不可欠となっている。


原子力発電の利点としては、安定したベースロード電源の確保や化石燃料市場への依存低減が挙げられる。


ウランは高いエネルギー密度を持ち、価格変動も比較的安定しているため、長期的な電力供給の予測可能性を高める可能性がある。


また、運転時の二酸化炭素排出がほぼゼロである点も、排出削減目標を掲げる同国にとって重要である。


東南アジアでは電力需要の増加を背景に、小型モジュール炉(SMR)を含む原子力の再検討が進んでいる。


カンボジア政府はロシアや中国との協力協定を締結し、人材育成も進めており、将来的な選択肢として原子力を視野に入れている。


一方で課題は多い。原子力導入後も燃料や技術、人材の多くを海外に依存する構造は残る。


建設費は50億〜150億ドル規模とされ、完成までに10〜20年を要する可能性があり、資金調達は対外依存を伴う。


また、安全規制や廃棄物管理、専門人材育成などの制度基盤が未整備であることも障壁となる。


こうした中、カンボジアは現実的なエネルギー政策として再生可能エネルギーを優先している。


電力開発計画(2022〜2040年)では水力、太陽光、蓄電、バイオマス、天然ガスを柱とし、2024年以降は新規石炭発電を承認しない方針を示している。


太陽光は導入が迅速かつ低コストで、制度改善により普及拡大の余地が大きい。


現時点で原子力発電の即時導入は現実的ではなく、規制能力や財政基盤の整備が前提となる。


技術の成熟を前提にすれば、2035年から2045年頃にかけてエネルギーミックスの一部となる可能性はあるが、当面は再生可能エネルギーの拡大と電力網の強化が優先課題である。

 

 

 

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