トランプ再登板で揺れるASEAN、カンボジアは多極外交を模索

トランプ再登板で揺れるASEAN、カンボジアは多極外交を模索
2025年03月11日(昨日)00時00分 公開
トランプ再登板で揺れるASEAN、カンボジアは多極外交を模索

<写真:Khmer Times>

 

2024年12月にアジア開発銀行(ADB)が公表した報告書によれば、ドナルド・トランプ前大統領の米政界復帰は、アジア太平洋地域の経済成長および中長期的な展望に対し、重大な影響を及ぼす可能性がある。保護主義的な通商政策への転換に加え、財政および移民政策の変化が主要因として挙げられている。

 

実際、トランプ氏が再び大統領に就任してからわずか1カ月余りで、対中関税の追加導入や、欧州連合(EU)からの輸入品に対する25%の関税措置の発表など、保護主義的な政策が次々と打ち出され、国際社会に波紋を広げている。

 

こうした米国の姿勢変化を受け、ASEAN諸国は経済・安全保障の観点から、外交方針の見直しを迫られている。特にカンボジアでは、外交の軸足を多極的なバランス重視型へと移行させる動きが顕著である。

 

アジアン・ビジョン研究所(AVI)のチェン・キムロン所長は、ASEAN憲章および東南アジア友好協力条約(TAC)に基づき、「相互尊重」「内政不干渉」「平和的解決」などの基本原則を堅持しつつ、ASEANの中心性と統一性を強化すべきであると主張する。

 

カンボジアにおいても、憲法第53条で規定されている「永世中立」および「非同盟」の理念に基づき、特定の勢力に偏らない外交政策が維持されている。キムロン所長は、このような中立的立場が国際紛争への巻き込まれを防ぎ、持続可能な発展と平和の推進につながると分析する。

 

一方、シンガポール国立大学東アジア研究所のラム・ペン・エー上級研究員は、ASEAN加盟国の多様な政治体制が独自の外交スタイルを形成していると述べ、「ASEAN中心の多国間主義」が今後一層重要になると指摘する。米中対立が先鋭化するなかで、ASEANが特定の大国に依存することなく、包摂的な外交関係を構築する必要性が増している。

 

カンボジア政府も、こうした地政学的変動に備え、貿易の多角化や地域協力の強化を通じて、経済的安定を確保する方針を打ち出している。ソック・シファナ特命上級大臣は、RCEP(地域的包括的経済連携)加盟国としての枠組みを活用し、「アジア太平洋地域における機会を最大限に引き出すべきである」と述べた。中国企業の誘致にも注力し、対米関係の不確実性を補完する構えを見せている。

 

経済学者ドゥック・ダーリン氏もまた、カンボジアの経済主権強化に向け、自由競争市場の維持と投資政策の多様化を提唱する。ASEANの共通ルールに則った貿易は、市場アクセスの拡大、サプライチェーンの強靭化、投資の予見可能性向上といった具体的な利益をもたらすと強調する。

 

米中の対立が国際秩序に大きな影響を及ぼす中、ASEANの一員としてのカンボジアは、多極的な戦略の下で中立外交を模索している。地域主義の強化と柔軟な外交姿勢の維持が、今後の持続的発展および経済的自立に向けた鍵となる見通しである。

 

 

 

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