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<写真:khmertimeskh.com>
カンボジア政府が2026年4月1日に施行した「政令第52号」により、同国の自動車市場は大きな転換点を迎えている。
完全電動の乗用車に対する輸入関税が従来の35%からゼロに引き下げられ、電気自動車(EV)の普及を後押しする政府の姿勢が一段と鮮明になったためである。
この政策の背景には、燃料価格の上昇がある。
首都プノンペンでは、ガソリン価格が1リットル当たり約1.25ドルとなり、2年前の約0.90ドルから大幅に上昇した。
中東情勢の不安定化による原油価格の高騰を受け、政府は価格上限の設定に踏み切ったものの、燃料の大半を輸入に依存する構造そのものは変わっていない。
石油価格の上昇は外貨流出を招き、国家経済に継続的な負担を及ぼしている。
こうした状況のもとで、EVへの転換は避けて通れない政策課題となっている。
登録台数は急速に増加しており、2023年の313台から2024年には2253台へと拡大し、2026年2月時点では累計1万4534台に達した。
このうち乗用車は1万363台を占める。2026年初頭には、月間登録台数が1カ月で倍増する動きもみられ、普及の勢いは明らかに強まっている。
もっとも、国内全体の車両数約830万台と比べれば、EVは少数派である。
しかし政府は、2030年までを見据えたEV普及戦略や充電インフラ整備の規制枠組みをすでに整えており、今回の減税措置はその流れをさらに加速させるものである。
インフラ面でも前進がみられる。国内にはすでに200カ所以上の急速充電設備が整備されており、プノンペンとシアヌークビルを結ぶ高速道路沿いにも新たな設備が設置された。
民間企業による投資も進み、全国規模で充電網の拡張が続いている。
加えて、発電の約63%が水力や太陽光などのクリーンエネルギーによって賄われており、EVの環境面での優位性も比較的高い。
一方で、地方では依然として充電網の整備が十分でない地域が多く、都市部との格差は大きな課題として残っている。
EVの購入判断は、居住地域や利用環境に大きく左右される状況である。
税制改正は市場競争の構図にも影響を与えている。EVの総税負担が21~25%程度に抑えられているのに対し、内燃機関車は約122%に達する。
この差は販売価格に直接反映されるため、EVの価格競争力は大きく高まることになる。
中古車市場にも影響は及び、旧税率で輸入された車両は、新規輸入車との厳しい価格競争に直面する可能性が高い。
東南アジア各国でも同様の動きが広がるなか、カンボジア市場では中国メーカーが主導的な役割を担う構図が一段と強まるとみられる。
すでに現地生産拠点を持つ企業もあり、価格面での優位性を背景に、今後さらにシェアを拡大する可能性が高い。
ただし、内燃機関車が短期間で市場から姿を消すわけではない。
道路事情や地方のインフラ制約を踏まえれば、当面はEVと内燃機関車の併存が続く見通しである。
それでも、燃料価格と税制の両面でEVに追い風が吹くなか、消費者の車両選択の基準は急速に変化しつつある。
カンボジアの自動車市場は今、明確な転換点に立っている。
EVが将来的に主流となるかどうかは、今後の政策運営とインフラ整備の進み具合に左右されるが、その方向性自体はすでに定まりつつある。
※ポステオリジナルニュースは各ニュースソースを参考に編集・制作しています。