タイ・カンボジア国境紛争、地政学と経済の交錯が深刻化

タイ・カンボジア国境紛争、地政学と経済の交錯が深刻化
2025年06月27日(金)00時00分 公開
タイ・カンボジア国境紛争、地政学と経済の交錯が深刻化

<写真:Khmer Times>

 

タイとカンボジアの間で続く国境紛争が再び激化し、両国関係はここ数年で最も深刻な局面を迎えている。

 

発端は5月下旬にエメラルド・トライアングルで発生した武力衝突であり、それを契機として外交的非難の応酬と経済的報復措置が交錯し、国境地帯の安定および周辺住民の生活に深刻な影響を及ぼしている。

 

この紛争の根底には、1904年および1907年に締結された仏・シャム条約に基づくカンボジア側の国境認識と、より精緻な国土地図に基づくタイ側の主張との間での長年にわたる相違がある。

 

1962年に国際司法裁判所(ICJ)がプレア・ヴィヒア寺院の領有権をカンボジアに認定したにもかかわらず、両国間では現在に至るまで正式な国境線の画定がなされていない。

 

今回の衝突を受けて、タイは国境貿易の制限や人の往来に関する規制を強化し、経済的圧力をカンボジアに加えている。

 

これに対しカンボジア側は、国内に出稼ぎに出ている労働者の帰国を呼びかけるとともに、国境インフラの遮断も示唆し、報復姿勢を鮮明にしている。

 

さらに、タイのパエトンタルン首相による一連の「非専門的」発言に対し、カンボジアのフン・セン上院議長が首脳間の電話会談内容を公開するなど、両国首脳間の個人的信頼関係にも決定的な亀裂が生じた。

 

こうした緊張の背景には、地政学的な力学の変化も存在する。

 

近年、カンボジアは中国との軍事的関係を強化しており、一方のタイは従来通り米国との安全保障協力を維持している。

 

これにより、両国間の戦略的立場の違いが顕在化し、対立の構図が複雑化している。

 

両国内ではメディア報道やSNSを通じた愛国的世論の高まりが見られ、政府間の冷静な対話を妨げる要因となっている。

 

経済面では、相互依存関係が完全な断交を回避させてはいるが、国境画定を巡る根本的な対立に加え、それぞれの国内政治事情が事態の長期化を招く可能性がある。

 

ASEANや国際社会による仲介努力も一定の限界に直面しており、実効性ある解決を図るには、両国が歴史的経緯を踏まえた上で、新たな協議枠組みの構築に踏み出すことが不可欠である。

 

 

 

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