カンボジアの米国関税対応、経済多角化と外交交渉が鍵

カンボジアの米国関税対応、経済多角化と外交交渉が鍵
2025年04月22日(火)00時00分 公開
カンボジアの米国関税対応、経済多角化と外交交渉が鍵

<写真:Khmer Times>

 

米国トランプ大統領による突如として発表された関税措置が、カンボジア経済に深刻な打撃を与えている。4月3日に公表された「相互関税」により、カンボジアの対米輸出品に対して49%という異例の高率関税が課されることとなった。

 

この決定は国内外の専門家から「トランプ主義の極致」との批判を受けており、とりわけ繊維、履物、旅行用品といった主要輸出産業に大きな影響を及ぼしている。

 

政府関係者の分析によれば、この関税が全面的に施行された場合、初年度には約15億ドル規模のGDPが失われ、最大で6%に及ぶ経済成長率の低下が見込まれている。これに伴い、製造業の工場閉鎖や大規模な労働者の解雇が発生し、国内の失業率上昇が避けられない状況にある。

 

また、金融機関における非パフォーマンス債権(NPL)の増加も懸念材料として浮上している。

 

このような危機的状況に直面し、カンボジア政府は迅速に対応措置を講じた。米国政府との交渉を開始するとともに、国家レベルでの特別委員会を設置し、関税問題への対応を主導している。

 

短期的には雇用維持を目的として税制優遇措置やエネルギー補助金の導入を進め、企業の負担軽減を図っている。また、物流費や電力コストの見直しなど、競争力強化に向けた構造改革にも着手している。

 

中長期的な戦略としては、経済の多角化が重要課題とされる。これまで中国に偏っていた外国直接投資(FDI)の出所を多様化し、新たな投資先として東アジア諸国や欧州、中東諸国の企業を誘致する動きが強まっている。

 

さらに、低付加価値産業から高付加価値産業への産業転換も進められており、情報通信技術(ICT)や金融、観光といったサービス分野へのシフトが模索されている。あわせて、東南アジア諸国連合(ASEAN)内での経済連携強化や、EUおよび湾岸協力会議(GCC)諸国との新たな自由貿易協定(FTA)の交渉も進行中である。

 

一方で、今回の関税措置の背景については、米国内の政治的意図が指摘されている。

 

経済研究者ヴィカス・レディ氏は、この措置は米国内の製造業支持層に対するアピールであると同時に、連邦準備制度への圧力を強めるための政治的パフォーマンスである」との見解を示している。つまり、内政上の対立が外交政策に波及した形となっており、その影響はカンボジアのような開発途上国にも及んでいる。

 

現在、トランプ政権は90日間の猶予期間を設けており、カンボジア政府はこの期間を利用して交渉と改革を並行して進めている。地政学的緊張が高まる中、同国の政策的柔軟性と交渉力が今後の経済の行方を左右する鍵となる。

 

 

 

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