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<写真:Khmer Times>
カンボジア政府はトランプ前大統領が導入した相互関税措置に対し、深い懸念を表明した。米国との通商は同国にとって貧困削減および経済成長の要であり、過度な関税措置はこうした努力に深刻な影響を与えるとして、関税撤回と再交渉の機会を強く求めている。
カンボジア側の説明によれば、同国は米国からの輸入品に対して最大でも35%の関税しか課しておらず、それに対して米国が発動した97%に及ぶ報復関税は著しく過剰であると批判している。
また、同国は米国の貿易赤字国リストで第18位にとどまり、その赤字額はベトナムの10分の1、中国の25分の1に過ぎないと指摘している。さらに、カンボジアの経済規模は米国の820分の1、人口も20分の1にすぎず、対等な貿易収支を要求すること自体が現実的ではないと主張した。
カンボジアは内戦や混乱を経て包摂的な経済開発に舵を切っており、貧困削減を最重要課題として掲げている。その中核を担うのが輸出型製造業であり、同国は国際貿易ルールの順守のみならず、環境・社会・ガバナンス(ESG)基準の導入、さらに労働権保護を目的とする国際労働機関(ILO)との連携「Better Factories Cambodia」などを通じ、国際基準に即した産業育成を進めてきた。
特に米国向けに輸出されている衣料品、履物、かばん類といった低付加価値製品が、米国の経済的あるいは安全保障上の利益を脅かすものではないとし、カンボジアにとってこれらの輸出は雇用と生活の基盤であると訴えている。米国との貿易関係は双方にとって有益であるとの認識を強調した。
さらに、物理的な財のやり取りにとどまらない、広義の貿易構造への理解も求めた。米国製品の多くは第三国経由でカンボジアに輸入されており、たとえばシンガポールを通じた粉ミルクの流通では、米国からの輸出はシンガポール向けと記録され、カンボジア側の統計ではシンガポールからの輸入として扱われる。このような統計上の乖離が、実態を反映しない貿易赤字の誤認を招いているとの見解を示した。
加えて、フォードやP&Gといった米国企業のブランド製品がタイやベトナムで生産されている事例においても、最終的な収益は米国本社に還元されており、米国経済への貢献は小さくないとした。サービス分野でも、クラウド、金融、教育、エンターテインメントなど、米国企業による提供サービスがカンボジア社会に深く浸透しており、これらの経済的貢献は統計上は見えにくいが、無視できない要素であると指摘した。
カンボジア政府は相互関税の即時適用に対し強い遺憾の意を表明し、協議の場の設置と措置の猶予期間の延長を米国側に求めている。経済構造の実態に即した柔軟な対応を呼びかけ、「生産拠点がどこにあるかではなく、誰が最終的な利益を享受するかが現代経済の本質である」と述べた上で、トランプ前大統領に対し、数千人のカンボジア人労働者の雇用を守るためにも政策の再考を求めている。
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