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<写真:khmertimeskh.com>
カンボジア政府は再生可能エネルギーの導入拡大に向け、電源構成の抜本的な転換を進めている。2030年までに国内電力の70%を再生可能エネルギーで賄い、2050年までにカーボンニュートラルを実現するという長期目標の下、「クリーン・カンボジア戦略」および「電力開発計画(PDP 2022–2040)」を中核とした取り組みが本格化している。太陽光、水力、風力といった主要な分野において、大規模なプロジェクトが着実に展開されている状況である。
鉱業エネルギー省によれば、これまでに総額50億ドルを超える23件の再生可能エネルギー事業が承認されており、その内訳は太陽光発電所が12件、風力発電所が6件、さらに蓄電池関連事業なども含まれている。同省のロッタナク大臣は、再生可能エネルギー証書(REC)制度の導入や投資優遇策の整備を通じ、海外からの資本誘致に注力していると強調した。
電力開発計画では、太陽光発電の設備容量を2022年の432メガワットから、2030年に1000メガワット、2040年には3155メガワットへ拡充する計画が示されている。水力発電についても、2030年までに1560メガワット、2040年には3000メガワットへの増強を目指す。また、バイオマス発電については2040年までに198メガワットへの拡充を見込んでいる。
こうした動きを後押しするため、政府は2021年改正の投資法を通じて、再生可能エネルギー分野への投資家に対して最長9年間の法人税免除、輸出税および前払税の免除、研究開発費用の150%控除など、多岐にわたる優遇措置を講じている。さらに、屋上ソーラー発電向けの電力料金制度の見直しや、スマートグリッド、蓄電池、揚水発電といった次世代インフラへの支援も進行中である。
2024年時点におけるカンボジアの総発電能力は5044メガワットに達しており、水力発電が全体の約46%、石炭火力が42%を占める。一方で、再生可能エネルギーの比率は12%にとどまっている。地理的にはメコン川流域に位置し、水力発電の潜在能力に恵まれているほか、東南アジアでも有数の太陽光資源を有することから、今後の再エネ拡充には大きな余地がある。
稼働中の大型施設としては、スントレン州のセサンⅡ水力発電所(400メガワット)や、パーサット州のソーラー発電所(90メガワット、将来的には150メガワットへ拡大予定)が挙げられる。また、モンドルキリ州では2027年の稼働を目指して150メガワット規模の風力発電所の建設が進行中である。
地域連携の面では、ASEAN電力網(APG)を通じた越境電力輸出の取り組みが進展しており、ラオスやベトナムからのクリーン電力の輸入に加え、シンガポールへの電力供給計画も具体化しつつある。シンガポールはカンボジアから水力および太陽光を組み合わせた最大1ギガワットの電力を、新設される海底ケーブルを通じて輸入する構想を進めており、これにより数十億ドル規模の新たな収益源が創出される可能性がある。
一方で、再生可能エネルギーの普及に向けた課題も依然として残されている。許認可手続きの煩雑さ、投資インセンティブの不透明さ、発電所建設に関する規制整備の遅れといった制度的な問題に加え、再エネ関連の人材育成や国内市場の成熟化には時間を要するとの指摘もある。
それでもなお、エネルギー研究機関EnergyLabの試算によれば、2040年までにソーラーと蓄電池の導入を拡大すれば、累計204億ドルのコスト削減と1億1700万トンの二酸化炭素排出削減が可能とされている。農村部におけるソーラー導入支援や、グリーンファイナンス制度の整備も進展しており、同国の再生可能エネルギー市場は着実な成長を遂げつつある。
持続可能な経済成長と脱炭素社会の実現を両立するため、カンボジアは再生可能エネルギーを国家戦略の柱と位置づけ、地域のグリーン電力供給拠点を目指して、静かに、しかし着実に歩みを進めている。
※ポステオリジナルニュースは各ニュースソースを参考に編集・制作しています。