カンボジアの海外労働者派遣、見直しが迫られる時期

カンボジアの海外労働者派遣、見直しが迫られる時期
2025年03月19日(水)00時00分 公開
カンボジアの海外労働者派遣、見直しが迫られる時期

<写真:Khmer Times>

 

カンボジアは長年、海外への労働者派遣を外貨獲得と雇用対策を兼ねた経済戦略として位置づけてきた。しかし、近年の国内における労働力不足および経済構造の変化を受け、この方針の見直しが求められる局面に差し掛かっている。

 

海外出稼ぎ労働者による送金は、カンボジア経済にとって依然として重要な収入源である。2024年には約138万人の出稼ぎ労働者による送金総額が30億ドルに達し、国内総生産(GDP、約500億ドル)の約6%を占めた。しかし、その一方で、こうした海外派遣は国内産業における労働力確保に深刻な影響を及ぼしている。

 

国家開発評議会(CDC)によれば、2024年には新規および拡張を含む投資案件414件が承認され、約32万人分の新規雇用が見込まれている。にもかかわらず、工業団地や特別経済区(SEZ)では人材の確保が難航しており、各地の工場には「求人」を訴える垂れ幕が目立っている状況である。

 

農業分野には約380万人が従事しており、海外就労者138万人(非合法就労者を含めれば最大276万人)を農村部出身と仮定した場合、残る農村労働力は約232万人にとどまる。さらに年齢・技能・地域分布を調整すれば、国内で即時に就業可能な労働者はわずか52万人程度であるとの試算もある。

 

このような状況は、かつてカンボジア政府が海外投資家に対して「若く豊富な労働力」をセールスポイントとして掲げていた時代の終焉を象徴している。総人口約1600万人のうち、35歳未満の若年層が6割以上を占めるが、都市部への人口流出および国外移住の加速により、地方における労働力の枯渇が進行している。

 

また、韓国や日本などで技能実習や期限付き契約を終えた労働者の帰国後の動向も不透明である。一部の者は滞在延長を目的に難民申請を行ったり、政治活動に関与したりするケースも確認されており、これは受け入れ国にとっても新たな社会問題となっている。

 

一方で、政府が海外労働者派遣の制限に動けば、「反政府的労働者への報復」との批判が野党から噴出する可能性もある。海外派遣の継続・制限いずれの方針にも政治的リスクが伴い、慎重な対応が求められている。

 

近年、カンボジア国内でもタイやマレーシアと比べて見劣りしない職場環境や賃金水準が整備されつつあり、労働者が海外就労のリスクと利益を再評価すべき段階にある。治安や法的安定性、家族との距離といった要因を考慮すれば、国内就労の魅力は相対的に高まりつつある。

 

経済、産業、そして労働の三位一体による構造改革が急務である。労働政策の再構築と国内雇用の魅力向上こそが、カンボジアが持続可能な成長を遂げるための鍵となる。

 

 

 

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