タイ出稼ぎ労働者の大量帰還、契機にIOMが支援体制強調

タイ出稼ぎ労働者の大量帰還、契機にIOMが支援体制強調
2025年10月02日(本日)00時00分 公開
タイ出稼ぎ労働者の大量帰還、契機にIOMが支援体制強調

<写真:khmertimeskh.com>

 

タイとの国境紛争を受け、カンボジアへ大量に帰還した出稼ぎ労働者について、国際移住機関(IOM)カンボジア代表のネリス・グサイニ氏は、政府の的確な対応を評価するとともに、今回の事態を将来の経済的・社会的発展の契機と捉えるべきであると強調した。

 

カンボジア労働職業訓練省の発表によれば、タイ軍によるカンボジア領への侵入後、約92万人が国境を越えて帰国した。そのうち約70万人は、タイ国内で農業、建設、サービス業といった分野に従事していた出稼ぎ労働者であった。

 

グサイニ氏は、今回の事態が政治的危機に端を発するものであり、その規模の大きさから国全体に与える影響は甚大であるものの、「移民危機」として捉えるのではなく、過去にも同様の事例が存在していたと指摘する。

 

たとえば、2020年の新型コロナウイルス感染拡大時や、2014年のタイ国内の政情不安の際にも、それぞれ約25万人のカンボジア人が帰国している。

 

今回の対応においては、帰国者への即時的かつ包括的な人道支援が最優先とされる。帰国した労働者の多くは、十分な貯蓄を持たないまま、さらには給与の未払い状態で帰国しており、安全な住居の確保、収入源の創出、債務の整理といった課題に直面している。

 

加えて、心理社会的支援の必要性も高く評価されている。長期にわたる海外滞在から帰還した労働者は、家族や地域社会との再統合に困難を抱える場合が多く、特に女性、子ども、障害者、LGBTQ、少数民族など、社会的に脆弱な立場にある人々に対しては、個別の支援が求められる。

 

IOMは、カンボジア政府、国連機関、国内外のNGOと連携し、労働職業訓練省を中心に国境地域での受け入れ体制を構築している。具体的には、職業訓練の提供、メンタルヘルス支援、雇用機会の紹介、緊急避難所の設置など、多角的な支援を展開している。

 

今後の重点課題としては、移住ガバナンスの強化が挙げられる。移民関連データの整備、帰還者の再統合支援政策の策定、社会保障制度への移動性の反映、国境管理能力の向上などが求められている。

 

カンボジアは近年、単なる労働力の供給国という枠を超え、移民の通過地や目的地としての役割も担うようになっている。こうした変化を背景に、IOMは「今こそ、未来への投資を行うべき時である」と述べ、国際社会と連携しながら、引き続き支援を行う姿勢を明らかにしている。

 

 

 

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