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<写真:khmertimeskh.com>
カンボジアとタイの国境をめぐる緊張の高まりにより、90万人を超えるカンボジア人出稼ぎ労働者が帰国した。
両国間の労働協定に基づき合法的にタイに滞在していた約120万人を含む推定200万人の労働者のうち、多くが治安悪化や差別の懸念から帰国を決断したとされる。
この突発的な人口の逆流は、受け入れ体制が整わない地方経済や社会サービスに大きな負担をもたらす一方で、適切に対応すれば国内産業の活性化や海外依存の是正といった経済構造の転換につながる可能性を秘めている。
政府は雇用のマッチング支援、職業訓練、特別経済区への労働者配置といった各種対策を講じているが、現時点では失業率の上昇が避けられず、多くの帰国者が臨時的かつ低賃金の職に就く状況が続いている。
アジア開発銀行(ADB)のカントリー・エコノミストであるミラン・トーマス氏は、「今回の帰国労働者は国内労働力の最大10%に相当する規模であり、労働市場と企業の双方に対する政策支援が急務である」と指摘した。
あわせて、再訓練の実施、低利融資の拡充、賃金補助といった雇用促進策の必要性を強調している。
産業界においても、技能訓練や労働者の能力認証制度の整備が課題となっている。
カンボジア・中国商業協会の副会長であるロル・ヴィチェット氏は、AIによる代替リスクが低い職種への労働移行を促し、職業訓練制度(TVET)の活用を呼びかけた。
さらに、米国がカンボジア製品への関税を19%に引き下げたことにより、輸出志向型の投資が拡大する見通しである。
これにより、製造業、農産加工業、再生可能エネルギーなどの分野で新たな雇用が創出されると期待されている。
こうした成長機会を的確に取り込むには、帰国労働者の早期統合と人的資本の最大限の活用が不可欠である。
経済の多角化と国内自立を目指すカンボジアにとって、今回の労働力の逆流は単なる人道的課題にとどまらず、持続可能な経済成長に向けた重要な転機と位置づけるべきである。
※ポステオリジナルニュースは各ニュースソースを参考に編集・制作しています。