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<写真:khmertimeskh.com>
アジア開発銀行(ADB)は、米国がカンボジア製品に19%の関税を課した場合、短期的な影響は限定的であるが、2030年頃にかけて実質消費が減少する可能性があるとする報告書を公表した。
報告書「Cambodia and the United States Tariff: Modeling the Economic Impacts with GTAP‑FIN」では、国際貿易分析用のGTAPモデルを用いて3つの関税シナリオを試算している。
試算対象となったのは、現行の19%関税、想定される基礎関税率の10%、そして一時的に検討された36%関税の3つである。
短期的には、米国の輸入需要の減少が段階的に進行するため、カンボジアに一定の利益をもたらす可能性も指摘されている。
特に、中国やベトナム、バングラデシュなどがより高い関税を課される状況下では、カンボジアの価格競争力が相対的に高まり、短期的には実質消費が+0.05%増加するとの予測が示された。
しかしながら、こうした優位性は一時的なものであり、2030/31年には実質消費が-0.32%程度縮小する見通しとなっている。
報告書では、10%関税の場合は有意な利益が見込める一方で、36%関税が適用された場合には実質消費が約2%減少する可能性があると分析されている。
この場合、雇用や貧困層への影響が避けられず、社会的な波及効果も懸念される。
また、報告書は関税政策の不確実性にも言及している。
米国の政策決定がアドホックに行われることから、投資家の信頼感が損なわれるリスクがあるとし、こうした変動要因はモデルには織り込まれていないため、実際の影響は試算を上回る可能性があると警鐘を鳴らしている。
実際、トランプ政権下では当初49%の「相互関税」が示され、最終的に36%、そして19%へと引き下げられる経緯があった。
カンボジア経済は米国市場への輸出に大きく依存しており、特に衣料・履物・旅行用品分野が中核をなしている。
米国の関税政策がこれらの産業に及ぼす影響は大きく、結果として雇用や所得に直接的な影響が波及する恐れがある。
すでにADBは、2025年の成長率予測を従来の6.1%から4.9%に引き下げており、関税リスクに加え、地域紛争などの外部要因も影響している。
カンボジア副首相は、19%関税の適用が衣料・履物セクターの壊滅的打撃を防いだとの見方を示しており、仮に36%または49%の関税が継続されていれば、深刻な経済的被害が避けられなかった可能性を示唆している。
本研究は、対米関税の影響を「緩やかな逆風」と位置付けつつも、その長期的リスクを過小評価すべきではないと強調している。
たとえ19%関税に落ち着いたとしても、2030年には実質消費の減退という形で負の影響が現れる可能性が高い。
一方、10%程度の関税に抑えられれば経済的なプラス効果も得られる可能性があり、今後は関税環境の変化に柔軟かつ戦略的に対応する必要がある。
※ポステオリジナルニュースは各ニュースソースを参考に編集・制作しています。