詐欺施設を巡る人身取引問題、カンボジアに国際批判強まる

詐欺施設を巡る人身取引問題、カンボジアに国際批判強まる
2025年10月02日(本日)00時00分 公開
詐欺施設を巡る人身取引問題、カンボジアに国際批判強まる

<写真:khmertimeskh.com>


カンボジアは、米国国務省が毎年発表する「人身取引報告書」において、2025年も4年連続で最低評価のTier 3に分類された。この評価は、同国における人身取引対策の構造的欠陥が依然として是正されていないことを示しており、国際社会からの強い懸念を招いている。

 

報告書は特に、オンライン詐欺施設(いわゆる「スキャム・コンパウンド」)における強制労働や人身取引の実態を重視している。なかでも、政府高官が捜査の妨害に関与し、被害者や証人に対する脅迫行為、さらには詐欺施設の運営から利益を得ている可能性があると指摘されている。

 

こうした評価は、2025年6月にAmnesty Internationalが発表した独自調査とも一致している。同調査によれば、国内には少なくとも53カ所の詐欺施設が存在し、多数の被害者が拘束、拷問、強制労働などの深刻な人権侵害を受けている実態が確認された。

 

警察が介入したにもかかわらず、施設の活動が継続しているケースも多く、政府の対応が形骸化しているとの批判が根強い。

 

これに対し、カンボジア政府は一貫して反論の姿勢を示している。全国対人身取引国家委員会(NCCT)のチュ・ブン・エン副議長は、「カンボジアは対策を緩めてはおらず、報告書はオンライン詐欺に偏重した不公正な評価である」と主張している。

 

首相直属の高級捜査チームの設置など、政府の取組を正当に評価すべきだとの立場を強調した。

 

しかし、国内外からはこうした政府の姿勢に対して疑念が高まっている。労働・人権団体の代表であるモエン・トラ氏は「米国の格付けは、カンボジアの国際的信用を大きく損なう恐れがある」と指摘したうえで、「抜本的な改善のためには、加担した関係者を厳正に処罰する姿勢が不可欠である」と強調している。

 

国際社会の対応も強硬化の様相を呈している。2025年9月、米国はカンボジア国内の複数の詐欺ネットワークに対し制裁措置を発動した。これらは、アジア各国から連れてこられた被害者を詐欺施設で強制労働に従事させていたとされる組織に対して科されたものである。

 

カンボジアは現在、東南アジアにおけるオンライン詐欺の主要拠点の1つと見なされており、被害者はタイ、ベトナム、マレーシア、中国などから勧誘され、現地で監禁・労働を強いられる事例が後を絶たない。

 

こうした国際報告や制裁措置は、カンボジア政府にとって重大な試練となっている。表面的な対応で国際社会の批判をかわすことはもはや困難であり、制度改革と責任追及を伴う本質的な対応が強く求められている。

 

 

 

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