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<写真:khmertimeskh.com>
カンボジア政府は27日、米国との新たな貿易協定「米カンボジア相互貿易協定」に署名し、米国から輸入されるすべての製品に対する関税を全面的に撤廃した。
これにより、米国企業にとってカンボジア市場へのアクセスは過去に例を見ない水準に達することとなる。
本協定は、フン・マネット首相とドナルド・トランプ米大統領との間で締結されたものであり、カンボジア側は米国製品に対する輸入関税を100%撤廃するとともに、非関税障壁の撤廃や米国基準の受け入れ、電子商取引に対する関税モラトリアムの維持といった措置を講じる。
さらに、米国の車両排出基準や医薬品・医療機器の承認制度を導入し、米国食品医薬品局(FDA)認証製品の流通を認めるほか、知的財産保護の強化や強制労働を含む労働権の保障、環境法の厳格な運用も協定に盛り込まれている。
一方、米国側はカンボジア製品に対する関税率を原則19%に維持するが、航空機部品、医薬品、特定農産品など一部品目については無税措置を講じる意向を示した。
米国通商代表部(USTR)は本協定を「法的拘束力を持つ新たな枠組み」と位置付け、米国輸出業者にとって有利な条件が整ったと評価している。
トランプ大統領は協定署名後の声明で「米国の労働者、中小企業、農家にとって利益となる強力な協定であり、公正な貿易体制の確立に資するものである」と述べた。
米国は2024年、カンボジアとの物品貿易において123億ドルの貿易赤字を計上しており、本協定はその是正の一手とも位置付けられている。
カンボジア政府は、米国からの安価な製品の輸入によるコスト削減や技術移転、外資誘致を通じて、国内産業の競争力向上を目指す考えである。
ただし、自動車や医薬品、農産品などの分野における競争激化は、国内生産者や地域の同業国にとって脅威となる可能性がある。
王立プノンペン大学の経済学者トン・メンダビット氏は「米国製品の流入は一部国内産業に打撃を与える恐れがあるが、投資誘致や生産性向上につながる可能性もある」と指摘する。
Thalias社のアルノー・ダークCEOも「本協定は単なる関税撤廃ではなく、構造改革への賭けである」と述べ、規制監視体制の整備や国際基準への対応の重要性を強調した。
今後はILO(国際労働機関)基準の順守、WTOルールとの整合性確保、デジタル取引に関する米国基準の導入といった制度運用面での実効性が問われる。
協定の実施段階においては2026~2027年が重要な転換期となる見通しである。
本協定は短期的な消費者利益の拡大と中長期的な国際的信頼の構築を両立させるものとされ、カンボジアにとってはベトナムやインドネシアといった域内競合国との差別化を図る一手ともなり得る。
もっとも、協定の真価は今後数年にわたる履行状況と制度改革の実効性にかかっている。
※ポステオリジナルニュースは各ニュースソースを参考に編集・制作しています。