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<写真:khmertimeskh.com>
カンボジア政府は「2021〜2035年シェムリアップ観光開発マスタープラン」に基づき、世界遺産アンコール遺跡群を中心とした観光振興を進めている。その中核を担うアプサラ機構(ANA)は、観光客の滞在期間を延ばし、観光体験の質を高めることを目的として、多角的な施策を展開している。
ANAのロン・コーサル副局長によれば、施設整備の効率化や旅行代理店サービスの質向上、環境・衛生・来訪者支援の改善を通じ、遺跡訪問の総合的な満足度を高めることに注力しているという。具体的な取り組みとしては、自転車専用道と駐輪場の整備、アンコール植物園の新設、さらには同機構が管理する3つの博物館における設備更新などが挙げられる。
遺跡観光にとどまらず、地域コミュニティとの交流を促進するツアーの企画・実施も進行中である。これにより、観光消費を地域社会へ波及させ、住民の収入向上にもつなげる狙いがある。観光の恩恵を地域全体で享受する構造をつくることで、持続可能な観光モデルの確立を目指している。
観光開発文化局のセン・ソテアラ局長は、既存のサイクリングルートに加え、プノン・ボック寺院やリアック・ニア寺院といった辺境遺跡へのアクセスルートの開発を検討していると述べている。また、ルンタエク・テチョーセン市内の集落と遺跡群とを結ぶ新たな経路の整備も進めており、観光客が地元の生活様式に触れる機会の創出を図っている。
インフラ面では、観光地内の案内標識や解説板の拡充により、ガイドを伴わなくても理解しやすい環境づくりが進められている。こうした取り組みは、個人旅行者やリピーター層への訴求力を高める効果も期待されている。
しかしながら、こうした努力にもかかわらず、アンコール遺跡群の国際来訪者数は依然として減少傾向にある。
アンコール・エンタープライズの報告によると、2025年1月から11月までの訪問者数は前年同期比3.47%減の86万7195人にとどまり、入場券収入も3.41%減の4048万ドルとなった。特に11月単月では、訪問者数が前年同月比18%減の10万1677人、入場収入は17%減の490万ドルと、落ち込みが顕著である。
観光開発と保全、地域経済とのバランスをいかに取るかが今後の鍵となる中、観光体験の質的向上を基軸とした施策の成果が問われている。
※ポステオリジナルニュースは各ニュースソースを参考に編集・制作しています。