ドル覇権に陰りか、25年に揺らぐドル優位

ドル覇権に陰りか、25年に揺らぐドル優位
2025年04月01日(昨日)00時00分 公開
ドル覇権に陰りか、25年に揺らぐドル優位

<写真:Khmer Times>

 

2022年以降、「キング・ダラー」と称される米ドルの優位性は、米連邦準備制度理事会(FRB)による積極的な利上げ政策により再び強化された。

 

インフレ抑制を目的とした高金利政策は、新型コロナウイルス禍後の供給網の混乱や量的緩和政策の副作用、さらにウクライナ戦争をはじめとする地政学的緊張の高まりを背景に正当化されてきた。

 

しかし足元では、その勢いに陰りが見え始めている。米国経済は雇用統計や個人消費の堅調さを維持しているが、2025年末にかけて利下げ観測が強まり、米ドルの先行きに対する不確実性が市場全体に広がっている。

 

ドル高のピークが近いとの見方も浮上している。複数の国際金融機関は、ドル指数(DXY)が2025年半ばにピークを迎え、その後年末にかけて先進10カ国通貨(G10)に対し最大10%の下落を予想している。

 

2024年の米大統領選でトランプ氏が勝利した後、一時的に関税や減税への期待感からDXYは6%上昇したが、それ以降は市場の不安定さを反映して乱高下を繰り返している。

 

FRBが3月に公表した「ドット・プロット」では、2025年と2026年にそれぞれ2回の利下げが示唆されており、これはドルに対する下押し圧力となる可能性がある。

 

一方で、利下げ回数が減る、あるいは見送られるというシナリオも排除されておらず、金融市場はなお注視を続けている。

 

とはいえ、国際決済通貨としてのドルの地位には依然として大きな変化は見られない。国際銀行間通信協会(SWIFT)が3月に公表した報告書によれば、世界の決済の48.9%が米ドルで行われており、次位のユーロ(22.2%)に大差をつけている。

 

また、貿易金融においてはドルのシェアが81.8%に達し、人民元の6.3%を大きく引き離している状況である。

 

一方で、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカによる「BRICS」は、米国の経済制裁や関税強化の脅威を受け、通貨統合や独自通貨構想の推進に苦戦している。

 

トランプ政権は仮にドルに代わる通貨を創設した場合には「100%の関税を科す」と警告しており、この発言はBRICS諸国の連携に冷や水を浴びせるものとなっている。

 

今後の注目点として、2025年4月2日に発表予定の「報復関税計画」がある。これは、米国が他国による関税措置に対抗し、同等水準の関税を課す内容であり、通商摩擦の激化が懸念されている。

 

こうした貿易戦争の長期化は、短期的にはドルへの支援材料となり得るが、中長期的には外交関係の悪化や経済全体の不確実性を高める要因となる。

 

加えて、米商品先物取引委員会(CFTC)の最新データによれば、ドル指数に対する投機的な買い持ちポジションは、2カ月半ぶりの低水準に落ち込んでいる。

 

現在、ドルの覇権に挑む通貨は存在しておらず、新たな基軸通貨が市場に受け入れられるまでには、相当な時間と制度的な整備が必要とされる。

 

金融市場においては「ドルの退位後に奏でられる新たな旋律」がいつ響き始めるのか、その行方に注目が集まっている。

 

 

 

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