カンボジアをアセアンから除名すべき、シンガポール元外交官が主張

カンボジアをアセアンから除名すべき、シンガポール元外交官が主張
2020年11月02日(月)16時43分 公開
カンボジアをアセアンから除名すべき、シンガポール元外交官が主張

 

シンガポールの元外交官のビラハリ氏がカンボジアについて、外部からの影響が強く、国内政治を操作されているとして、同国を東南アジア諸国連合(ASEAN)から除名すべきだと発言した。

アジアタイムズなど複数のメディアが報じた。

 

アメリカと中国による東南アジアにおける影響力争いが激化する中、今回の発言をしたシンガポール元外交官はカンボジアとラオスについて、中国を友好国であり”お財布”としていることから、中国の気まぐれで命令的な外交の餌食になっているとした。

 

ビラハリ氏は、23日にシンガポールの法定機関および研究機関が主催したウェブセミナーで「真の中立とは自身の利益を知り、それに基づいて立場をとることで、他人に自身の利益を定義されることではない。」と発言したという。

 

カンボジアと中国の関係が密接になることがASEAN地域の不安定さの要因になりうるという外国政府からの非難に加え、ビラハリ氏がカンボジアをASEANから除名すべきだとの主張を発表したことで、カンボジア政府の怒りの種が増えたとみられている。

 

これに対してカンボジアは27日、政府に近いメディアで”A Singaporean Wolf Warrior Is Destroying ASEAN Unity and Centrality(シンガポールの戦狼がASEANの統一性と中心性を破壊)”と題した公開状を発表した。

 

公開状は匿名だが、カンボジアの外交官によって書かれたとみられており、今回のビラハリ氏の発言について、反発的かつ扇情主義的で一貫性がなく、時には矛盾しているとした。

アジアタイムズは公開状に中国の手が加わっていることを示すものは確認できなかったと分析している。

 

さらに、ビラハリ氏に対して皮肉的に、「老人だから物忘れしないように」とした上で、ASEANが加盟国の経済的、政治的、戦略的な方向性を決定する超国家的権威を保持するように設計されたことは一度もないということをビラハリ氏は忘れていると述べた。 

 

公開状では、「シンガポールを含む一部の国が軍事基地や借地権を外部に提供しているという事実を都合よく無視していると」シンガポールの内政にも疑問が投げかけられている。

 

シンガポールはアメリカの確固たる戦略的同盟国とみられており、2019年にはアメリカ軍がシンガポールの軍基地の使用権を2035年まで認める協定を更新している。

また、シンガポールは東南アジア地域に戦略的な関心を抱いているイギリスにも、同国の軍基地への使用権を許可していた。

 

2017年、カンボジアはアメリカとの合同軍事演習を突如中止し、中国との合同軍事演習を開始した。

その数ヶ月後には、カンボジア最高裁判所が当時の最大野党であったカンボジア救国党(CNRP)に解散を命じていた。

最高裁が海外の勢力と共謀して国家転覆を企てたとするケム・ソカ党首の国家反逆容疑に関連し、党ぐるみでの関与があったと認定した。

 

総選挙を控えていた当時、政権による野党に対する厳しい弾圧に国際社会からの批判が高まっていた。

 

カンボジア救国党解党の翌年の2018年7月に総選挙が実施され、事実上対抗勢力が不在のため、フンセン首相率いる与党・人民党が圧勝した。

アメリカをはじめとする欧米諸国からは選挙の公平性を疑問視する声が上がったが、中国からは選挙結果を疑問視する声は上がっていない。

 

それから、カンボジアとアメリカの関係は冷え込んでおり、カンボジアは中国との関係をさらに深める舵取りをした。

現在では、中国はカンボジア最大の貿易相手国だ。今年10月には、カンボジアは中国との自由貿易協定(FTA)に調印した。

 

同じく今年10月、アメリカのシンクタンクである戦略国際問題研究所(CSIS)は衛星写真の分析した結果として、リアム海軍基地でアメリカが建設した施設が破壊されたことが確認されたと発表した。

 

リアム海軍基地はカンボジア南西部にあり、各国が領有権を争う南シナ海へのアクセスが容易なことから戦略的に重要とされている。

アメリカの有力紙がカンボジアは中国による基地の軍事利用を認める合意を秘密裏に結んでいたとの報道をしたが、フンセン首相はこれを否定している。

 

国内での中国の商業的影響力が強くなるにつれて、カンボジアの民衆の反中感情が高まりカンボジア人民党(CPP)の愛国主義に対して疑問が湧き上がるとアメリカ政府はみている。
 

27日に発表された公開状について、元カンボジア外交官のグループによって作成されたとみられているものの、作成者の署名がなかったことから、カンボジア・ウォッチャーの間では公開状の作成者についての議論が行われているという。

 

また、公開状に使用されていた言語は、非外交的であるだけでなく、明らかにプロによる文章ではなく、英語のスペルミスもあることから、公開状は急いで翻訳され、発表されたものではないかとの見方も出ている。

 

Voice of Americaの報道によると、カンボジア人民党のSokEysan報道官は、ビラハリ氏の発言について、「自身の政治的及びイデオロギー的考え方を反映したものだ」と話し、この論争はカンボジアとシンガポールの両政府とも正式に取り上げてる問題ではないとした。

 

また、駐カンボジア・シンガポール大使のマイケル・タン・ケン・シオン氏が任期終了にあたりヘン・サムリン議長と会談した日と公開状が発表された日が同じであったことについては、ただの偶然ではないかとの見方が強い。

 

 

ベトナムが中国と領有権を争う南シナ海の海域で行っていた石油の掘削活動に対して、中国は頻繁に脅しを行っていた。

一方で、マレーシアは2019年に国連に対して単独で南シナ海での大陸棚延長を申請していた。

 

これを受け中国がすぐにマレーシアによる申請を拒否したが、フィリピン、ベトナム、インドネシアなども同様に口上書を提出し、南シナ海に関する法的立場を国連に主張している。

 

中国はこれらの主張に対して国際法に基づいて異議を唱えるのではなく、領有権紛争自体は当事国間の協議を通じて解決するとされているASEAN諸国の行動規範(COC)を遵守するとし、アメリカの干渉を防ぐ形をとった。

 

カンボジアとラオスについては、南シナ海問題について、対中経済関係を重視して中国に配慮する態度をみせている。

カンボジアがASEAN議長国を務めた2012年には、7月のASEAN外相会合において、南シナ海に関連してフィリピンやベトナムの主張する対中批判の文言をカンボジアが拒否し、ASEAN史上初めて共同宣言を出すことができないという事態が起きた。

 

その4年後の2016年には、カンボジアは再びASEANに対し、同地域における中国の外交政策に関する文言について、公式声明を控えるよう圧力をかけ、その数週間後に中国はカンボジアへさらに6億ドルの援助と融資を約束していた。

 

2022年にはカンボジアが再びASEAN議長国を務めるため、ASEAN諸国からは警戒が強まっているという。

万が一、来年に南シナ海行動規範が合意に至らない場合、2022年に決定が持ち越される可能性があり、カンボジアが議長国という立場を利用して、中国にとって最も有利な合意を受け入れることが懸念されるという。

 

ビラハリ氏の言及は、カンボジアは中国よりも東南アジア諸国の利益を優先させる必要があり、そうでなければASEAN諸国連合からの追放というリスクを負うことになるというシンガポールからのメッセージとして読み取ることができる。

 

ビラハリ氏は、万が一、カンボジアをASEANから除名させることになっても、「それは未来のためであり、除名が不測の事態であるとしてもASEANからの除名を考慮する価値がある」としている。

 

 

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