カンボジア・タイ国境衝突、経済に深刻な影響

カンボジア・タイ国境衝突、経済に深刻な影響
2025年08月19日(火)00時00分 公開
カンボジア・タイ国境衝突、経済に深刻な影響

<写真:khmertimeskh.com>

 

5月28日にカンボジア、タイ、ラオスの三国国境地帯「エメラルド・トライアングル」で発生したカンボジアとタイの軍事衝突により、両国関係は急速に悪化し、カンボジア経済に深刻な影響が広がっている。

 

衝突を受けて国境は一時閉鎖され、カンボジア政府はタイからの農産物、通信機器、エネルギー製品の輸入を停止した。両国は衝突の責任を互いに非難し、外交的緊張が継続している。

 

経済への影響は、貿易、観光、避難民問題、出稼ぎ労働者の4分野に集中している。

 

貿易面では、輸入制限の対象品目は代替可能なものが多く、果物・野菜のタイからの輸入額は2025年1〜7月で960万ドルと、全体に占める比率は低い。エネルギー製品も、シンガポールやベトナムからの調達により供給維持は可能とされる。

 

一方で、肥料とキャッサバをめぐる依存度は高い。2024年にタイから4100万ドル相当の肥料を輸入しており、2025年1〜7月にはキャッサバを1億3000万ドル相当輸出していた。今後は国内加工能力の拡充が喫緊の課題となる。

 

観光業は最大の打撃を受けた分野である。2024年にはタイ人観光客が全体の32%を占めていたが、衝突後の2025年7月にはアンコール・ワットにおけるタイ人向け入場券販売が前年同月比で92.32%減少した。観光業は約51万人の雇用を支えており、特にシェムリアップ州の飲食・宿泊業への影響が深刻である。

 

国境地帯では約12万人が避難を余儀なくされ、農作業や家畜の損失が生じた。収入減少により債務返済能力が低下し、貸し倒れリスクが高まっている。カンボジア国立銀行は12の商業銀行と連携し、債務救済措置を実施しているが、今後の情勢次第では追加支援が不可欠となる。

 

タイ国内には約120万人のカンボジア人労働者が滞在し、2024年には10億ドル以上の送金が行われた。外交関係の悪化により帰国が余儀なくされれば、送金収入の急減と国内雇用の逼迫が懸念される。2025年8月時点で国内の求人は約10万件にとどまり、労働吸収力には限界がある。

 

政府は現在、国内農産物流通の多様化、中小企業の生産支援、キャッサバ加工施設の整備などに取り組む必要がある。また、観光業の再活性化に向け、シアヌークビルやカンポット、ケップなどの代替観光地の活用と、中国、韓国、ベトナム市場への誘致が求められる。

 

避難民に対しては生活再建支援や農業資材の供与が必要であり、出稼ぎ労働者の帰国を見据えた職業訓練や公共事業の拡充も急務である。

 

今回の衝突は、サプライチェーンの再構築や地場産業の強化に向けた契機ともなり得る。政府は外交努力を継続し、ASEANおよび国際社会との連携を通じて、平和的な解決を目指すべきである。

 

 

 

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