カンボジア労働市場、制度改革が持続的発展の鍵

カンボジア労働市場、制度改革が持続的発展の鍵
2025年09月12日(本日)00時00分 公開
カンボジア労働市場、制度改革が持続的発展の鍵

<写真:khmertimeskh.com>


カンボジアの労働市場において構造的な課題が浮き彫りとなっている。国際労働機関(ILO)のアジア太平洋地域スキル専門家であるメアリー・ケント氏は10日、カンボジア経済の急成長を評価しつつも、その労働市場が非正規かつ低技能に依存している実情を指摘し、「持続可能な発展のためには制度的改革が不可欠である」との見解を示した。

 

ケント氏はILO主催の「クロストーク」セッションに登壇し、製造業、建設業、サービス業を中心とする急速な経済成長が貧困削減に寄与している一方で、労働者の約9割がインフォーマルセクターに属していることを問題視した。こうした環境では、所得保障や社会保護の枠組みが整備されておらず、特に若年層と高齢層が脆弱な立場に置かれていると述べた。

 

加えて、産業界の需要と労働者の技能との間に大きな乖離が存在しており、労働市場の効率性を阻害しているという。特に基礎教育しか受けていない労働者が全体の約45%に上ることが、課題として浮上している。デジタルリテラシー、課題解決能力、リーダーシップといった中核的スキルの強化が急務であると強調した。

 

政府はこうした状況を踏まえ、職業訓練の対象者を150万人に拡大する方針を打ち出し、見習い制度の導入などを進めている。ILOは、教育制度と労働市場の連携強化、労働市場に関するデータの整備、官民対話の制度化を提唱しており、マレーシア、インド、シンガポール、南アフリカといった国々の先進事例を参考に、公私連携によるスキル開発モデルの構築が期待されている。

 

カンボジアの人口構成は若年層が多く、「人口ボーナス」として経済成長の潜在力を秘めている。しかしながら、ケント氏は「若者に良質な雇用を提供できなければ、社会的不安の要因となる可能性がある」と警鐘を鳴らす。起業支援や中小企業の育成に加え、建設、製造、観光、医療、グリーン産業への重点的な投資を通じて、雇用の創出が必要であるとした。

 

非正規雇用の是正に向けては、事業登録手続きの簡素化や社会保障制度への任意加入の促進が重要であり、これに加え、国連主導による「グローバル雇用・社会保護加速計画」が支援を展開している。2035年までに、貧困世帯を対象に職業訓練と現金給付を組み合わせた支援策を20万世帯へ拡大する方針である。

 

ILOや他の国連機関は、国家雇用庁の機能強化や、オンライン学習を通じた基礎教育修了支援など、複数の施策を同時並行で進めている。ケント氏は「包摂的でレジリエントな労働市場の実現には、政府、企業、社会が一体となって取り組むことが不可欠である」と強調した。

 

 

 

[© poste-kh.com 2016-2025 All Rights Reserved.]
※ポステオリジナルニュースは各ニュースソースを参考に編集・制作しています。

ホットニュース

Choose Classified categories