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<写真:khmertimeskh.com>
タイ政府が、カンボジアとの間で締結した海洋資源共同開発に関する覚書(MoU44)の継続を国民投票に付す方針を示したことにより、総額3000億ドル規模と見積もられる天然資源開発プロジェクトの停滞が現実味を帯びてきた。
MoU44は、2001年に両国間で署名されたもので、タイ湾における重複主張海域(OCA)の原油および天然ガス資源の共同開発を目的としている。同海域には、原油約3億バレル、天然ガス約10兆立方フィートが埋蔵されていると推定されている。
しかし、20年以上にわたり具体的な進展が見られず、タイ国内では当該覚書の有効性に疑問の声が強まっていた。
9月30日、バンコクでの記者会見において、タイのアヌティン首相は、MoU44および隣接する陸上境界に関するMoU43について「国家主権と安全保障に関わる重大な問題であり、国民の判断を仰ぐべきだ」との見解を表明した。
首相自身は覚書の破棄を支持する姿勢を示しつつも、最終的な決定は国民投票によって下すとの方針を強調した。
この動きを受けて、カンボジア政府は公式な反応を控えているが、MoU44が失効すれば、外資誘致や海底資源の収益化を戦略的柱としてきた同国にとって、大きな痛手となることは避けられない情勢である。
カンボジア・パンニャサストラ大学のケヴィン・ナウエン教授は「法的枠組みの不確実性は、エネルギー企業にとって重大なリスク要因である。投資判断を遅らせ、期待される財政的リターンにも影響を及ぼす」と述べている。
さらに、共同開発の停滞は、カンボジアにおけるエネルギー自給体制の構築を妨げるだけではなく、インフラ整備や雇用創出の機会も損なうとして、強い懸念を示した。
カンボジア政府はこれまで、領有権問題と経済開発のバランスを図る現実的手法として、共同開発を推進してきた。
天然資源の開発にとどまらず、物流や精製といった関連産業の成長にも波及効果が期待されており、同国の経済多角化戦略における中核的な位置付けとなっている。
今後、タイ国内における国民投票の動向によっては、カンボジアにとって最も価値の高い未開発資源の活用がさらに遠のく可能性がある。
この問題は、両国の外交関係のみならず、地域の経済・エネルギー戦略全体にも影響を及ぼす重要な局面を迎えている。
※ポステオリジナルニュースは各ニュースソースを参考に編集・制作しています。