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<写真:khmertimeskh.com>
カンボジアと米国は、二国間関係を新たな段階へと進展させつつある。米国はこれまでカンボジアに対して課していた武器禁輸措置を解除し、2017年以降中断されていた年次軍事演習「アンコール・センチネル」の再開に合意した。
この軍事演習は2010年に創設され、両国軍による連携強化や災害救援能力の向上を目的としていた。しかし、両国関係の悪化と、カンボジアが中国との軍事協力を拡大させたことにより、2017年を最後に中断されていた経緯がある。
加えて米国は、カンボジアの将校を米陸軍士官学校および米空軍アカデミーに派遣する枠組みを拡充し、越境犯罪、麻薬密輸、オンライン詐欺、大規模犯罪組織への対策に関する協力を強化している。これにより、軍事のみならず治安・法執行分野における実務的連携も進められている。
貿易分野でも重要な進展が見られた。米国通商代表部によれば、米カンボジア間で法的拘束力を持つ相互貿易協定が締結され、カンボジアは米国製品に対する輸入関税を全面的に撤廃した。一方で米国側はカンボジアからの輸入品に対し、原則19%の関税率を維持するが、協定別表に記載された製品群についてはゼロ関税が適用されることとなった。
さらにこの協定には、非関税障壁の撤廃、知的財産権の保護、デジタル貿易の促進、強制労働の禁止、環境保護など、多岐にわたる制度改革項目が盛り込まれており、カンボジア国内の制度整備と国際的な通商基準への適合が期待されている。
これらの協力強化の背景には、10月26日にカンボジアとタイが署名した「クアラルンプール共同宣言」をめぐる米国の外交的関与が存在する。米国は地域安全保障における自国の立場を強化し、東南アジアにおける戦略的影響力を再構築しようとしている。
カンボジア側では、2024〜2027年期におけるASEAN‑米国対話関係の調整国という役割を担っており、デジタル経済の統合促進や越境犯罪対策の強化を通じて、地域の平和・安定・繁栄に貢献する姿勢を明確にしている。
このように、軍事・貿易・安全保障、さらには地域外交を横断する包括的な協力関係の深化は、両国にとっての実利にとどまらず、東南アジア全体の戦略的均衡においても重要な意味を持つ。カンボジアがこれまで中国との間で深めてきた軍事・経済関係に対し、米国との連携を再構築する姿勢は、地政学的な再調整の一環として注目される。
今後の焦点は、合意された協定内容の実効化と制度改革の履行に加え、域内諸国との連携を含む実践段階における展開にある。両国が掲げた協力ビジョンが、現実の政策や運用の場においてどのように具体化されるかが問われる局面となっている。
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