カンボジアでコメ価格急落、政府は農家支援と構造改革に本腰

カンボジアでコメ価格急落、政府は農家支援と構造改革に本腰
2025年12月16日(火)00時00分 公開
カンボジアでコメ価格急落、政府は農家支援と構造改革に本腰

<写真:khmertimeskh.com>

 

カンボジアにおいてコメ価格の急落が続いており、農家の間で政府への不満が急速に高まっている。主な要因としては、2025年6月以降に実施されたタイとの国境閉鎖による貿易の停滞と、国際市場における価格変動の不安定さが挙げられる。

 

これにより、農業大臣ディット・ティナ氏に対する批判が強まりつつあるが、専門家は農業価格の安定には複数の省庁による連携が不可欠であると指摘している。

 

国境封鎖の影響により、農産物の輸送経路は大きく制限され、生産者価格、いわゆるファームゲート価格は著しく低下した。現在、コメは1kgあたり600〜650リエル、キャッサバは250リエル以下まで落ち込み、とりわけ主力作物への依存度が高い地方農家の経済的損失は甚大である。国内では農業および貿易政策の抜本的見直しを求める声が強まっている。

 

政府は代替措置として、ベトナムへの輸出拡大に取り組んだが、関税総局(GDCE)の報告によれば、2025年1月から11月までの両国間の貿易額は前年同期比でわずか0.4%増の33億9000万ドルにとどまった。一方で、タイとの貿易額は13.8%減の6億7900万ドルに急落している。

 

こうした状況を受けて、農業・森林・水産省(MAFF)は農家支援策として、金融機関に対する返済猶予の要請を行うとともに、政府に対しては価格安定基金の創設を提言した。11月には、農業・地方開発銀行(ARDB)を通じて、コメ買取資金として4000万ドルの追加予算が投入された。

 

しかしながら、ティナ農相に対する批判は依然として根強く、一部からは辞任を求める声も上がっている。ティナ氏は「私を非難して気が晴れるのなら、それでも構わない。ただし、それが農家支援の行動につながるならば」と述べ、コメ工場による適正価格での買い取り、肥料販売業者の支払い猶予、そして消費者による農家支援製品の購入を呼びかけた。

 

農業価格の安定化には、MAFFのみならず、商業省(MoC)、地方開発省(MRD)、水資源気象省(MOWRAM)などとの政策連携が重要である。特にMOWRAMは灌漑施設の整備を進めており、農業用水コストの削減を通じて生産性の向上を図っている。トール・チェタ水資源相は「水資源へのアクセス改善によって生産コストが下がり、農業の競争力が高まる」と強調した。

 

一方、MVグループのセバスチャン・ジョージCEOは、今回の価格下落について「国際的な需給の影響が大きく、国内政策のみでは限界がある」との見解を示した。輸出依存型の産業構造に加え、輸送コストの高さ、加工体制の未整備、国境貿易の調整不足といった構造的課題の解決が急務であると訴えている。

 

王立カンボジア学士院の専門家スン・サム氏も「コメ価格の問題は長年にわたる構造的課題であり、特定の省庁の責任に帰すことはできない」と語る。輸送費、肥料価格、燃料コストなど複数の要因が複雑に絡み合っており、政府内での横断的な政策協調が求められている。

 

こうした中、政府は12月、プレイベン州に新たな国境貿易ゲート「メウンチェイ=タンナム国境門」を開設し、ベトナムとの貿易拡大に向けた取り組みを本格化させた。フン・マネット首相は「タイへの依存度を下げ、ベトナムとの貿易額を将来的に200億ドルに引き上げたい」との意向を表明した。

 

今後の農産物価格の安定に向けては、取引ルートの多様化、灌漑への継続的投資、生産技術の近代化、農業協同組合の強化など、長期的かつ包括的な対策が求められる。政府は関係省庁や民間企業と連携し、持続可能な農業経済の構築に向けた取り組みを加速させている。

 

 

 

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