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<写真:khmertimeskh.com>
急速な経済成長を遂げてきたカンボジアにおいて、不動産市場の偏りが社会課題として浮上している。
過去20年にわたる都市開発により、首都プノンペンをはじめとする都市の景観は大きく変貌したが、安定した収入を持つ中間層の多くが依然として持ち家を手にできずにいる現状が続いている。
都市部では、富裕層や外国人投資家を主要な対象とした高級コンドミニアムやゲート付き住宅地の開発が相次ぎ、中間層が参入できる価格帯の住宅供給は極めて限られている。
月収900~1200ドル程度の中間層世帯は、住宅価格の高騰により市場から締め出されており、こうした層は全国の住宅需要の4割以上を占めるにもかかわらず、既存の政策では十分に対応できていない。
政府は2014年に「手頃な住宅」の価格基準を3万ドル未満と定めたが、インフレや所得水準の変化により、現在の住宅市場との乖離が広がっている。
加えて、住宅ローン制度の整備も進んでおらず、多くの世帯は月300~400ドルの家賃を支払いながらも、住宅購入に至れない状況にある。
国際協力機構(JICA)は、プノンペン市内だけでも2035年までに32万戸の新規住宅が必要であり、そのうち年間8,000戸程度が中間層向けとして求められると推計している。
専門家はこの状況を「住宅の絶対的な不足ではなく、社会的な圧力点の現れ」と指摘する。
持ち家を保有できないことは、家族の生活の安定や教育機会、さらには社会的流動性にも悪影響を及ぼし、長期的には社会の分断や不満の拡大につながる恐れがある。
ベトナムやフィリピンにおいては、税制優遇措置や官民連携による混合型住宅開発などを通じて、中間層の住宅取得支援が進められている。
2030年までに中所得国上位への移行を目指すカンボジアにおいても、同様の政策転換が急務である。
住宅政策の抜本的な見直しには、中間価格帯で質の高い住宅の安定供給に加え、金融機関による支援、そして都市計画における視点の転換が求められる。
中間層が都市中心部から排除されることなく、生活基盤を維持しながら持ち家を取得できる環境の整備こそが、今後の社会的安定と持続的な経済成長の鍵を握るのである。
※ポステオリジナルニュースは各ニュースソースを参考に編集・制作しています。